blog - mini + cafe

小鳥遊柚子葉の日常XI。

毎回のコトながら、両マスターの承認はいただいた上での公開です。
リリレリ本編は、この段階では分からないですが、その裏側で行われていたことの1つということです。

----
リリック/レリック外伝
小鳥遊柚子葉の日常XI



1. 決戦の場 -つーか、決心の場ってか?-

 ──Conversation
 翼を折られ、尻尾を根元から吹き飛ばされた天候竜がのたうち、周囲の木々をなぎ倒しながら大地を揺るがす。
「でかい図体で駄々こねるなんざ、みっともないったらねーぜ!」
 その醜悪な様を鼻で笑った柚子葉が天候竜の頭部を殴りつければ、巨大な天候竜がもんどり打って倒れ、そのままぴくりとも動かなくなる。
「ったく面倒くせーな。…にしても、こんだけ天候竜が出てくるとか、ホントに大丈夫なのかよ」
「…メガ・ラニカを助けるためだからって、さっき悠太郎が言ってたよ」
 この状態では気休め以下にもならないと柚子葉がかぶりを振り、小姫子が首を傾げる。
「…よく分からないけど、何にしても、天候竜が柚子葉と戦うなんて、無理しなきゃいいのにね」
 マナの塊である天候竜は、魔法そのものであると言っても過言ではない。
 魔法を打ち消し、キャンセルすることが得意とする柚子葉にとって、天候竜とは強敵には違いないが戦いやすい相手というわけである。
「おいおい、どーせならあたしの心配にしてくれよ? あんなの何匹も相手にしてたら、身体が保たねーぜ」
 まさか柚子葉がお得意様相手の耐久戦で負けるわけがないと軽く笑い飛ばして、小姫子が得物を肩に担ぐ。



2. 誰がための正義か -主観なんざ押しつけんなよ-

 ──Battle
「いや、見つけるつもりは全然なかったんだけどさ、──見つけちまったもんはしょーがねーよなあ、『正義』(ザ・ジャスティス)」
 天空を舞う複数の天候竜を見上げながら生あくびをかみ殺す柚子葉と、その近くの低空をのろのろと飛んでいた少女との目が合ってしまったのは、本当に偶然だった。
「見なかったことにするという選択肢は、きっとないのよね」
「あったとしても、それはぜってーに選ばねーよ」
 やれやれと肩をすくめて、柚子葉が苦笑する。
「…柚子葉」
 相手に合わせて笑んだ柚子葉に、傍らの小姫子がそっとささやく。
「…この子、強いよ」
「ああ、分かってるさ。こんなとこにいるくらいだし、空を飛んでるアレをどうにかできる程度には強いってことなんだろ」
 柚子葉がうなずき、まとう黒色のマントをばさりと跳ね上げる。
「『正義』は天秤座の象徴にして、カードナンバーは十一。その意味するところは公正、潔白、調和、そして両立。そこから推測されるてめーの力は武装、ってとこか」
 問われた『正義』は動かず、その間に小姫子が手にする大鎌がかちゃりと硬い音を立てる。
「──貴女とは初めて会ったんだし、あたしはまだ何もしてないはずなのに、どうして分かっちゃうのかな。
 まあ、それはそれとして、剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力って言うじゃない?
 この世界ではさ、何をするにも力は必要なんだよ。誰かを守るにも、その過程で自分を守るにも、誰かを懲らしめるにも、もちろん自分の願いを叶えるにもね」
「てめーらの望みとか願いとか、そんなジコチューなことにいちいちあたしらを巻き込んでんじゃねーぜ」
 泡沫の魔女たる柚子葉のことは知っているだろう。
 がしかじと頭を掻いた柚子葉との間合いを嫌った『正義』が後ろに下がり、そのスペースを小姫子が詰める。
「人の願いだとか希望だとか、そういうのって多かれ少なかれジコチューなものじゃない!
 あたしから見れば、貴女が巻き込まれたくないってのだって、貴女個人の勝手な都合だよ。だったらわざわざ邪魔しないでって言いたいくらいだし!」
「るせーよ、こちとら国家権力の犬っころなんだ。てめーらがイケナイコトしてるってなら、それをどーにかすんのがあたしらのシゴトなんだよ!」
 吐き捨てた柚子葉が目で合図すると、それに従って小姫子が大鎌を逆手に持ち替える。
「そうは言ってくれるけど、あたしたちがやろうとしてることって、きっと誰の迷惑にもならないはずなんだけどね?
 …けど、それでもかかる火の粉は払わせてもらうよ──武装錬金『不屈の記憶』(レイジング・メモリーズ)!」
 戦闘態勢に入る小姫子に幾分か困惑する様子を見せながら、少女が核鉄から展開したのは二振りの小刀だった。
「さてさて、どうしてくれるのかな?」
 あまり減り張りの利いていない身体の前で左右の刃を交差させる『正義』に、柚子葉が鼻を鳴らす。
「どーするもこーするもねーさ、…頼むぜ小姫子」
「…うん」
 余裕の態度を崩さない『正義』に、鋭く踏み込んだ小姫子が得物を叩きつける。
「ふぅん、新しい飼い主さんは、貴女をかわいがってくれてるみたいね?」
「…柚子葉は、飼い主じゃない」
 半歩下がることでそれをかわした少女があざけると、対する小姫子がそれを否む。
「…私にとっては、大切な、とても大切な友達」
「ずいぶん幸せに暮らしているみたいで何より…と言いたいところだけど、まったく虫酸が走るよ!」
 小姫子の言葉に、柚子葉が口元をほころばせ、相手の少女が眉間にしわを寄せる。
「この子じゃあたしは止まらない、止められない!」
「あのな、そういうせりふは、こっちが試してから言うもんだぜ?」
 返す刀で大きく払われた小姫子の一撃を受け止めた少女が、身体に分からせてやろうと反撃に移ろうとしたしころで、顔色を変えた。
「な…っ!?」
「…かかった、封じの術式だよ」
 かつてアルカナに属していた小姫子のことは、よく知っているはずだった。だからこそ、明らかに格下だと分かり切っていたからこそ、『正義』には無意識の油断があったのだろう。
 まさか、この期に及んでのからめ手など、少女の知る小姫子であれば取るはずのない行動だった。
「…あんまり得意じゃないから、あとはお願いね」
「ああ、任せとけって」
 そう言って、柚子葉が折りたたみ式の携帯電話を開く。
「言っただろ、やってみなきゃ分かねーって? よーするに、とりあえずてめーは小姫子をなめすぎだったってことだぜ。そもそも、泡沫の魔女が、役に立たないでくの坊を連れて歩くとでも思ってたのか?」
「──敗因は、あたしの慢心だとでも言うの…!?」」
 身動きできない少女の問いに取り合わず、柚子葉が捕縛の術式をさらに重ねる。
「そうゆーつまんねー判断は、てめー自身に任せとくぜ。
 『正義』の逆位置が示すところは不正、冷徹、身勝手、そして独断。──てめーはきっと、いいように使われて、勝手に自滅したってことなんだろ。まったくつまんねー終わり方さ」
 少女の武器を取り上げた柚子葉をにらんで、『正義』の少女がぎりぎりと歯噛みする。



3. 第三者として -客観すぎんのも困るんだが-

 ──Conversation
 魔法警察によって『正義』が護送されていったのは、ほんの数分前のことだ。
「アルカナが来てんなら来てるって言っといて欲しかったかもな」
 思わぬ形で『正義』と戦うことになった柚子葉が、電話越しの悠太郎に愚痴る。
「魔法庁の実務部隊でさえ出払っている、この事態に乗じたのでしょう。こうも混乱していては、貴女に伝えられるほど確度の高い情報にど得られませんよ」
「こうゆー場合はさ、確実な情報もいーけど、来てるかもって可能性だけでも有用なんだぜ」
 ため息をつく柚子葉だが、遠地の悠太郎には伝わらない。、
「それにしても、お互い傷一つなく彼女を捕らえるなんて、一体どんな魔法を使ったのですか?」
「小姫子が、文字通り魔法で上手くやってくれただけさ」
 自分は何もしていないと言う柚子葉の言葉を、鵜呑みにするような悠太郎ではない。
「なるほど、彼女は相当憤慨していたと聞きましたが、やはり柚子葉くんの仕業でしたか」
「やはりとか、人聞きわりーだろ。それじあたしがいつも罵詈雑言垂れ流してるみてーじゃねーかよ」
 まともに付き合ってやるのも億劫なのか、柚子葉の態度はとても学生として教師に対する態度ではない。
「おやおや、実に良くお分かりで」
「言ってろ莫迦悠太郎」
 通話を切った柚子葉が、大きなため息を吐いた。



4. 次で終わりとか -ってコレじゃ負けフラグだよな-

 ──Monologue
 そういや、あたしの考えたエピックはどーなってんだ?
 何となく気になって悠太郎に訊いてみたら、あれは今後の予防策として研究されてくだろうってことだった。
「そっか、だったら良かったぜ」
 それなら、あたしも、少しはメガ・ラニカのため何かができたってことだしな。

「さて、アルカナは残すところ首謀者一人だけとなりました。
 今のところ消息は不明ですが、魔法庁と魔法警察が共同作戦で網を張っているようですし、そう遠くないうちに報告があるでしょう」
 魔法庁があてがってくれたホテルの一室で、悠太郎とさっき話したことを思い出してた。
「そんな悠長なこと言ってっと、逃げちまうんじゃねーの?」
 その点については腰抜けではないことを祈るとか祈らねーとか、そんな悠太郎の戯言が終わる前に電話を切ったあたしは、頭を掻いた。
「…ふー、別にいーけど、のんきなもんだぜ」
 背中を合わせて座っている小姫子からは、規則正しい寝息が聞こえてくる。
「まー、どーせなるよーにしかならねーし、テキトーにやるしかねーよな」
 いつも通りこいつはマヌケな寝顔してるんだろうと勝手に想像して、あたしは苦笑した。


-つづく-






登場人物
・小鳥遊柚子葉(たかなしゆずは)…華ヶ丘高校普通科二年生。女。魔女。
・高木悠太郎(たかぎゆうたろう)…華ヶ丘高校化学教師。男。錬金術部顧問。
・樗木小姫子(ちしゃきさきこ)…柚子葉の協力者。女。武装式。元アルカナ。
・正義(ザ・ジャスティス)…今回のターゲット。女。武装式。

20:57 | 華が丘 | comments(0) | trackbacks(0)
0
    コメント
    コメントする










    この記事のトラックバックURL
    http://blog.liebelei.jp/trackback/952796
    トラックバック